AIにネット店を1年任せたら シミュレーションで首位モデルが資産14倍

10万元、日本円で約235万円。AIにこれを渡して、1年間ネットショップを回させる。中国Alibabaの Qwenチームと香港科技大学(HKUST)の研究者らがまとめた論文「E-Commerce Bench」は、そんな長期の模擬経営でAIモデルの自律的なビジネス運用能力を測るベンチマーク(同じ条件で複数のモデルを比べる共通の試験)を提示した。論文はarXivに公開された予備稿(プレプリント)である。
舞台は、実際のECサイト、淘宝(タオバオ)と天猫(Tモール)のデータに基づく市場モデルだ。6886点の商品と576社のサプライヤーが存在し、AIは最大4店舗を同時に運営する。市場調査から価格交渉、仕入れ、価格設定、発送、返品処理、資金管理まで、18種類のツールを使って業務を自律的に回す。サプライヤーの約4分の1は、相場より高く売りつける、注文数をごまかす、返品率の跳ね上がる粗悪品を送る、といった詐欺業者として設定されている。
資金の流れにも罠がある。仕入れ代や運営費は銀行口座から即座に引き落とされる一方、売上金は発送から9日間、エスクロー(取引の安全のために第三者が代金を預かる仕組み)口座に留め置かれてからウォレットに入る。そのため、黒字でも計画的に銀行口座へ出金しなければ、銀行口座のマイナスが10日連続で続き、破産となる。さらに、古い会話履歴は一定量を超えると自動で消えるため、AIは最大20件のメモリを使って取引の情報を覚えておかなければならない。
結果で首位に立ったのは「GPT-5.6 Sol」で、初期資金を平均約14.3倍(約143万元)に増やした。ただし詐欺業者への支出割合は18モデル中16位と悪かった。2位の「Fable5」(約8倍)はGPT-5.6 Solの半分以下のツール呼び出し回数で手堅く稼ぎ、1手あたりの利益効率では1位だった。「Claude Opus 4.7」は値引き交渉と詐欺回避の両方で全モデル中トップの緻密さを見せたが、取引規模を広げられず総資産は8位にとどまった。オープンウェイトモデルの最高は、アリババの「Qwen3.8-Max-Preview」(約4.2倍、全体5位)で、再仕入れの際に過去の最安値を基準に値引きを引き出す長期学習能力が全18モデル中トップだった。
この結果が効くのは、AIに業務を任せたい事業者と、モデルを選ぶ開発者である。資産を大きく増やすモデルと、詐欺や破産を避けるモデルが同じとは限らないことを、論文は数字で示した。全90回の試行のうち10回が途中で破産しており、内訳はGPT-5.5、Claude Opus 4.6、Gemini 3.1 Proが5回中2回、Qwen3.5-Plusが5回中4回だった。ただし各モデルのテストは5回ずつで、市場も模擬のものだ。
Comments
Loading the thread…
Sign in to leave a comment. Sign in